死を想い、生を表現する作家 クリスチャン・ボルタンスキー Lifetime(ライフタイム)国立新美術館

美大ではデザイン専攻だった私は、美術館に行くよりも、好きなデザイナーのショールームやそのデザイナーの製品をお店に見に行くことがほとんどでした。そんな私は、現代アートの何がいいのかよく理解しておらずファインアート専攻(油画、日本画などの純粋芸術を指します。)の友人に「この人の作品面白いよ」と様々な現代アーティストを勧められ、美術館に足を運んでも

「いや、これ作品なの?ガラクタでなく??」

と内心思っていました。

目次

トリエンナーレでの出会い

そんな時に大学に貼ってあった「トリエンナーレ」のポスターに釘ずけに。トリエンナーレとは、3年に一度開かれる国際美術展覧会のことです。毎年開催地が変わります。ちなみに今年は「あいちトリエンナーレ 2019」が開催されています。この上の写真がババーンと貼ってありました。
衝撃でした。

「だってこれ服の山じゃん!!」

これを実際に見たらどうなるんだろう、、自分の中で何かが起こる気がする・・・
私はいつも行動する時に一番に優先することが好奇心と本能です。例えその行動が非効率的で結果的に何の意味もなさなくても、後悔はしないのでいつものように好奇心と本能に従うことに。

こちらの「No Man’s Land」という作品です。
何がすごいってこの迫力。。
どういうコンセプトかというと約20トンの古着のピラミッドがあり、その上に神の手ならぬUFOキャッチャーのような高性能クレーンがあって、着物を摑みあげ、また散布する。人間ひとりひとりでもある衣服は、私たち人間の不可避の運命のように運ばれ、摑まれ、翻弄される。というものです。

当時見たときは、そんな深い感じのコンセプトと知らずにただただ、この迫力に心奪われていました。

これは面白い!

この時、私が初めて現代アートが面白い!と思えた作品に出会えた瞬間でした。

現代アートは楽しむもの!

それからは、様々な現代アートを以前よりも積極的に見るようになり、現代アートは作品を理解しようとすると難解なものが多いので自分が面白そう!楽しそう!と思える作品を見ることが大事だなと思いました。

前置きが長くなってしまいましたが、そんなこんなで久しぶりに、東京でボルタンスキーの展示をやっているということだったので、こちらのクリスチャン・ボルタンスキー Lifetime(ライフタイム)展に行きました。

国立新美術館

こちらの国立新美術館は日本で5館目の国立美術館として、2007年に開館しました。美術館としては珍しくコレクションを持たず、国内最大級の展示スペース(14,000m2)を生かした多彩な展覧会の開催、美術に関する情報や資料の収集・公開・提供、教育普及など、アートセンターとしての役割を果たす新しいタイプの美術館となっています。 場所も六本木という都心に位置しており、美術館の周りにはオシャレなお店がたくさんあります。

建築もかっこいい

中に入ると天井が高くてすごい解放感です!
外側もガラス張りでカッコいいのですが中に入るとさらに洗練されていて建物を見ているだけでテンション上がってしまいます。笑

展示は2階なのでエスカレーターで上に行きます。
この美術館はカフェはもちろんレストランや大きな図書館まで入っているので展示を見終わっても、一日楽しめます。

クリスチャン・ボルタンスキーとはどんな人?

なんか映画に出てくる悪役の俳優さんでいそう。。

1944年、パリに生まれたボルタンスキーは1960年代後半から短編フィルムを制作。その後、写真と積極的に関わるようになり、ドキュメントやビスケット缶などの日常品を組み合わせた人間の「記憶」に関わる作品で注目を集めました。80年代以降は、少年少女が写ったモノクロの肖像写真と電球を組み合わせ『モニュメント』と題した祭壇のようなインスタレーション・シリーズを制作。

彼の作品の大きな特徴とも言えるのが「生と死、宗教」を題材にしている作品が多いということです。今回の展示では、宗教的なイメージだけでなく、不在となった無数の歴史上の人々の記憶や、死者のイメージを想起させます。さらにその一部は第二次世界大戦での、ナチス・ドイツのユダヤ人強制収容所での大量虐殺という、おぞましい記憶と歴史を想起させるものとして美術という文化ジャンルを超えて、また国境をも越えて、世界的に大きな話題となりました。また、ボルタンスキー自身もユダヤの家系です。

なので作品は「暗い、重い雰囲気」のものが多いです。
私も以前見た「No Man’s Land」という作品以外は、苦手なものが多かったです。。
作品に事故で亡くなった人たちの写真などが多く使われているので正直、初めて現代アートを楽しんでみたい!という方、向きではないです。なのでそういうのが苦手な方にはあまりオススメしない展示かなと思います。

展示のみどころは?

過去最大の回顧展

今回の展示、何がすごいのかというとボルタンスキーの50年を作品と共に振り返るというもので、作家所有の作品も多数展示されており、その数、なんと45点にも及ぶのです!
一度にこれまでの数の作品を日本で見ることができるのは今回が最初で最後になるのではないのでしょうか。

展示の構成にもこだわりが

回顧展となると年代順に展示していくことが多いのですが、この展示はボルタンスキー自らが「展覧会をひとつの作品のように見せる」というコンセプトのもと、ひとつひとつの作品を組み合わせ、大きなひとつの作品として展示の構成をしているというこだわりっぷり。

作品はこんな感じ

展示作品のいくつかをご紹介!

ぼた山

「ぼた山」はたくさんの黒い服が積み上げられた山で、もはやその一枚一枚を見分けることは難しい。まるで人間の思い出が全て失われ、一体となっているかのようだ。個々人の個性は消え去り、不定形なかたまりだけが残されている。

この作品は中盤あたりに、どどーんと展示してあって大きさもそうですが一際、異彩を放っていました。

ミステリオス

こちらの作品は映像によるインスタレーション。ラッパ状のオブジェを用い、クジラとのコミュニケーションを試みた作品。
この作品はボルタンスキーにとって手にすることが出来ない知識を探求したもの。

室内は「ぼ〜ん」と音がしていました。
これがクジラの鳴き声なのだろうか。。

黄昏

床に置かれたたくさんの電球からなり、毎日3つずつ消えていきます。展覧会の初めの方はとても明るいのですが、最後には完全に暗くなります。
これは人生があらかじめ決められた「死」に向かって進んでいることを示しています。

私が行った時はだいぶ後半だったので電球がほとんど付いておらず、ただ部屋が暗い感じでこれが作品だとは気づきませんでした。笑

幽霊の廊下

揺れ踊る人形の大きな影が現れる霊の世界へと観客を誘う。

なんとこちらの作品は、この展示のためにボルタンスキーが制作したもので、大きなカーテンが並ぶ長い通路から構成されています。

他にも様々な(もう少し刺激が強めの作品が多数)作品が展示してありましたが、是非とも会場で鑑賞していただければと思います。

会場を出るとグッズショップが

会場を出るとすぐにボルタンスキーグッズが!
こちらは「幽霊の廊下」の人形をモチーフにしたストラップとグラスです。
このグラスは中に飲み物が入った状態で上から光で照らすと、この人形の柄が展示の影絵のように投影されるというもの。

こちらのマグカップは表面がマットな仕上がりでおしゃれな感じでした。

缶バッジも白と黒のシンプルな色合い。

トートバックもシンプルで普段も使えそうなデザインでした。

作品をモチーフとしたポストカードがありました。
送る人を選びそうですね。。。

吉岡徳仁 ガラスの茶室ー光庵 / ガラスのベンチ「Water Block」

展示が終わって帰ろうかなーと外に出ると、
美術館の外には「ガラスの茶室」と「ガラスのベンチ」がありました!
太陽の光を受けてキラキラしていました。
「わぁーい!!ガラスの椅子に座ろうー!!」と近づいて行ったら、作品なので座れませんでした。。

こちらの作品は期間限定で2021年5月10日まで展示中です。

まとめ

久しぶりのボルタンスキー。
なんだか私が学生の頃イメージしていたのより、だいぶ暗めの印象でした。終わった後の憂鬱感が少し辛かったです。。。

あとは、展示の空間に対して作品数が多く詰め詰めな印象を受けました。ボルタンスキーは空間を大きく使った作品が多いので、トリエンナーレで受けたあの迫力ある印象を国立美術館でも出せるといいのかなと、、少し見せ方がもったいなかったかなと思いました。

でも、好きな人は好きだと思うので、興味のある方は是非行ってみてくださいね!

所在地・連絡先・ウェブサイト

国立新美術館
住所 〒106-8558 東京都港区六本木7-22-2

開館時間10:00〜18:00(最終入館17:30)
休館日火曜日、年末年始
料金1,000円 (一般)

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