最近読んだ漫画でこんなにも心に刺さりまくった作品は出会ったことがないだろうと、個人的にとても衝撃的だった作品があったので紹介していきます。読み終わった後には一本の映画を観たようなそんな多幸感に包まれました。
こちらは松本大洋先生の最新作、10月30日に最新巻が出て完結した作品(全3巻)「東京ヒゴロ」です。
あらすじ
どんな内容かというと、こちらの最新刊の帯にこの漫画の全てが集約されているのですが(この帯の文言考えたコピーライターの方の言葉選びが素敵で、本当にすごいです。。)
もう一度雑誌を創りたいと編集者は奔走する。
東京ヒゴロ 3巻帯
もう一度漫画を創りたいと漫画家は苦悶する。
そして我々は知る。
創造することの喜びという大切な人生の道しるべを。
主人公の編集者、塩沢さんがあることが原因で勤めていた編集社を辞め、自分がかつて担当していた、または好きな漫画家だけを集めて理想の漫画雑誌を出版するために翻弄するお話し。
個人的オススメポイント
これは漫画に限らず私のように作品作ったりデザインやってる人間にもめちゃめちゃ刺さると思うのですが、
売れる作品と自分が作りたい作品は同意ではない
自分は何の為にこの漫画を描いているのか。あるいは作品を作っているのか。
漫画であれは売れるため、たくさんの人に読んでもらいたいから。作品から漫画という商業誌になってしまった瞬間から売れる為のテコ入れが編集からあったりします。(バクマンでもありましたが読者アンケートや今だとSNSでのバズり具合などで話しの展開を変えたり、女性キャラを増やしたりなど。)
それが作者が納得できる話の展開なら良いですが、いかにも読者に媚びるような「こうした方がみんな好きでしょ。」「この方が無難だよね。」みたいな展開をお願いされたりして、自分のやりたかったことってこんなことではないはずだ。でも売れなければこんなものただの自己満足の塊、ゴミと一緒だよ。みたいなまさにアートの世界ではみんな言われてきたこの言葉にすごい共感してしまいました。
そして主人公の編集者には確固たる信念があります。それは、、
「たとえ人気作品ではなくても、とてもいいものを持っている作家が沢山いることを。」
「売れている=それが良い作品」というのは商売的な観点からの尺度であって「人の心に響く作品=売れている作品」とは限りません。そしてこの信念を貫き、主人公は自分が描いてもらいたいと思う漫画家一人一人に会いに行き、自分の雑誌で描いてくれないかとお願いしに行きます。
ある漫画家は現役を引退して細々と田舎で生活していたり、別の仕事をしていたり、もう自分にはあの頃の勢いはないからと最初は断られるのですが、主人公と会い、あの頃のことを思い出し、自分が漫画家を目指していた一番苦しくも楽しかった時期を思い出し、今の漫画を描いてない自分って何だろうってなったりして、「後悔しない生き方」をしようと一生懸命になって行動する主人公に心を動かされる漫画家たちの一人一人の心理描写や人間模様がとても丁寧に描かれています。
元同僚の編集仲間も心の中では主人公に共感している反面、口では「実際にはそんなの無理だよ。どうせ刊行できないし、あの人もう漫画描いてないから会うだけ無駄だよ。」と言うのですが、最後には素敵なハッピーエンドが心を温かくしてくれます。
まとめ
特に私のようにデザインは仕事として割り切りながら自分の表現を作品として制作しているクリエイターや夢を諦めて悶々としている人に読んでほしい漫画です。
また絵のタッチも松本大洋先生の絵だったから成立しているのだろうと思うとても完成度の高い作品となっています。全3巻と量も丁度いいので、是非読んでみてください!