スピットバイトについて
スピットバイトってどんな技法?
スピットバイトとは、銅版に散布した松脂の粉末の上から、直接腐蝕液を筆につけて描く技法のことだよ。他の技法とは違って、腐蝕の濃度や時間を自由に調節できるから、筆の勢いや微妙な色合いが表現できるんだよ。[
へぇー、腐食液で描いていくなんて面白そうだね。
そうだね、彫ったりするのとは違って筆で描いていくのもまた楽しいんだよ。作り方をみていこうか!
松脂(まつやに)を銅版に散布する
この松脂をすり鉢で砕いて粉末にし、銅版に散布します。
今回は前回エッチングをした銅版に松脂を散布していきます。
用意するもの
- 松脂
- 加筆したい銅版
ねーねー、まつやにって何?石?
松脂とは
松の木から取れる天然樹脂のことだよ。銅版画の他にも、ヴァイオリンの弓に塗って音の出を良くしたり、野球で使う滑り止めの粉に使われたりと、松脂はとっても万能なんだよ。あと、松脂には防腐効果があるから、腐食液につけても、松脂が撒かれている部分は腐食しないんだよ。
へぇー、松脂っていろんなところで使われてるんだね。
粉末にしたものがこちら。
布に入れて上から振って銅版に満遍なく散布していきます。
落ちる粉の量は使う布の繊維の粗さによって変わってくるから作品によって色々な布で試してみるのも面白いよ!
上から均一に撒いていきます。
撒く時には、なるべく無風の所がいいのでこのような箱の中で撒くとうまく仕上がります。
満遍なく散布できました。
うん?でも松脂を撒いたら防食されるのに腐食液で描いても腐食されないんじゃないの?
(むっっ、今日はやけに鋭い質問をしてくるな。。だがこれもすでに調べ済み)それはね、、
スピットバイト の原理について
松脂で防食をする
松脂で銅版を均一に覆う。松脂で防食をします。
松脂を熱で少し溶かす
銅版の裏から熱っして松脂を少し溶かします。
少し溶かすことで隙間ができ、松脂に覆われている部分と、銅版がむき出しの部分が出来ます。
この時に、完全に松脂を溶かすと腐食されないので注意が必要です。
防食していない隙間の部分のみ腐食される
この状態で腐食すると、銅版がむき出しの部分のみ腐食され、全体が黒く塗られた感じに腐食されます。(粒子がとても細かいので綺麗な面として色が付きます)
なるほど、粒子の隙間の部分を腐食するから色が付くんだね。すごいねー。
じゃあ、続きを見ていくよ。
熱して松脂を固着させる
均一に松脂を散布できたら裏からアルコールランプなどで熱して松脂を少し溶かし、銅版に固着させます。
熱すると、少し透明になります。
熱しすぎると、粒子の隙間がなくなり腐食されないので松脂の色が少し飴色に変わってきたなと思うぐらいが完成の合図です。
腐食液で描画していく
色を付けたい部分に筆に腐食液を付け、描画をしていきます。
描画できたら15分〜20分程置いてしっかりと腐食させます。
筆で塗るというよりは、腐食液を銅版に盛る感じにするとうまく腐食されるよ。
アルコールで洗う
置いておいた銅版を水で洗い、アルコールで松脂を落としてきます。
へぇー、松脂ってアルコールで落ちるんだね。
綺麗に腐食されていました。
これで刷ってみたいと思います。
濃淡が綺麗
綺麗に濃淡が出ました。
腐食液を多めに重ねた部分はより濃く色が出ていました。
前回のエッチングのみの時と比べると、その違いは一目瞭然!
淡い濃淡が付いて作品に深みが出ました。
まとめ
今回はスピットバイトについて紹介していきました。
細かい色の調整がしやすい技法なので細部の明暗の描き分けをしたい時などにぜひ使ってみてくださいね。