国立西洋美術館
国立西洋美術館は、あのル・コルビュジェが建築しており(近代建築の五原則作ったすごい人)世界文化遺産に登録されています。そして建物もすごいのですが、収蔵作品も超名作揃い。一言でいうと日本を代表する作品数豊富な大人気美術館です。しかも上野から徒歩1分という最もアクセスと立地がいい最高に訪れやすい美術館となっています。初めてでどこの美術館に行ったらわからないという人もここに行けば欲しいもの全てが揃っています。
チケットはオンラインでの事前予約
チケットはオンラインでの事前予約が推奨となっています。当日チケットカウンターで購入もできますが、インバウンドで平日も混んでいて私が行った時も並んでいたのでネットでの事前購入をオススメします。
珍しく日時指定がなく「会期中ならいつでもいいですよ」というチケットでしたので、急な用事で行けなくなっても日時変更できるのが嬉しいですよね。
購入後はメールアドレスに予約完了のQRコード付きのメールが届きます。QRコードでそのまま展示室でピッとしてもらって入ることができます。
展示の見どころは?
初の現代アートを展示!
ついに来たか、、この時が。。
これを知った時は目を疑いました。
美術館は名前の通り、西洋美術館だったら西洋の美術を中心に、近代美術館だったら近代の美術を中心に展示をすると各美術館ごとに方針が定められています。そのため、現代アートを展示するのであれば東京都現代美術館などが展示します。ですが、その方針を覆すまさに新しい挑戦を今回実施したわけです。
なぜ現代アートを取り扱うことにしたのか
今まで西洋美術を専門に扱っていたのになぜ現代アートを展示することになったのか。
それはこの美術館を建てる際に、松方氏(国立西洋美術館は主にこの人のコレクションが収蔵されている)が考えていた「未来の芸術をつくってゆける刺激の場になってほしいという想い」がありました。
しかし、国立西洋美術館は西洋美術を扱っている限り、基本的に過去の芸術家たちが残した過去の作品群だけが集まる場所であり、それらは今生きているアーティストのものではありません。
ということは、先ほどの松方氏の考えた美術館が体現できているのかと考えた時に、今活躍しているアーティストの作品を扱うことは西洋美術という枠を超えてでも扱うべき、とても重要なことなのではないのかとなったのです。
このような背景から今回のような企画展が実施されるのことになったのです。
美術館の作品の括りは来場者が分かりやすいように鑑賞できるようにしているに過ぎないので本来であれば過去、現代ジャンル問わず様々な作品が同じ空間にあってもいいはずだと私は思っています。もちろん、西洋の古き良き宗教画のようなザ・アートな絵画も良いのですが、現代のコンテンポラリーやミクストメディアの分野は避けては通れない新しい表現方法であり今日のアートを形づくるものなので両方の対比が楽しめたら今までにない面白い試みになるのではと感じました。
まさか国立西洋美術館で現代アートが観れる日が来るとは思っていなかったので、早速行ってきました!
企画展 展示風景
「一体、どんな奇抜な現代アートがあるのかなー」と入ってすぐに待っていたのは、まさかの銅版画!
日々、銅版画で作品を作っている私がいうのもなんですが、銅版画はアートのジャンルでも超ニッチなジャンルなので、銅版画の展示でない限り入り口付近に展示してあることはほとんどないです。
これはこれで尖ってるな。。
中林忠良 NAKABAYASHI Tadayoshi
これをみると分かるのですが銅版画はこのように少しづつ腐食回数を増やして、何回も確認しながら刷って出来上がっています。これをステートと言います。こうやって展示すると銅版画を知らない人でも、制作工程が分かりやすくていいですよね。
こちらの作品には珍しくプレートマークがありませんでした。銅版画作品の縁にプレートマークという版の厚さが紙にも凹凸として写るのが銅版画の良さだよね!みたいな風潮があるのですが、そのプレートマークをあえて切り落としてるのか。。これは初めてみる作り方で、こういったやり方もあるのかと勉強になりました。
布施琳太郎 FUSE Rintaro
こちらの作品はいわゆる映像を使ったミクストメディアの作品。
情報社会における芸術のありかたというのみならず、iPhoneが普及して以降のひとびとのコミュニケーションの様態などを主題しています。
まぁ、現代アートはこんな感じでコンセプトがあるものもあればないものもあったり、逆にそのコンセプトが「何をいっているんだ。。」みたいなのもあったりと、本当に表現が自由で見ている人は分からないと思ってしまう人が多いのも事実。なので作品を完璧に理解するというよりも、こういった表現方法があるのかと思いながら鑑賞すると見やすいと思います。
ミクストメディアは簡単にいうと色々な異なる素材が合わさって作られている作品のことだよ。
クロード・モネ 修復されたC.M.の1916年の睡蓮
この作品は個人的に一番面白いなと思った作品です。
こちらはクロード・モネの幻の大作と言われている「睡蓮・柳の反映」という作品なのですが、実はこちら上半分が欠損してしまっているのです。理由は単純に保管状態がかなり悪かったらしくそのため絵の具部分が、はげてしまったのではないかと言われています。
実はこの作品は一年間かけて修復されたのですが、欠損部分に関しては「歴史的資料の価値を失わないために」とあえてそのままの状態になっています。ちなみに、こちらの作品の全体像を撮った白黒写真が存在するためこの作品の完成形がどういったものなのかというのは明らかになっています。
流石に巨匠の作品すぎて「修復するのどれだけのプレッシャーだよ」と想像しただけで怖くなりました。ましてや欠損部分を加筆するなんて。まぁ失敗するリスクを考えたら今のこの状態をキープしていかにこれ以上悪化しないようにするかに注力した方が賢明ですよね。。
今回その欠損部分をなんとこちらの作品は刺繍で補っているんです!発想が可愛い。。
欠損部分の手前が刺繍、奥にモネの油絵と合わせて一つの作品にしています。フォトショのレイヤーがまさに現実になったような作品で二つの違う素材が合わさることで全く違う雰囲気の作品に出来上がっていて、過去と現代の技術の融合という感じでとても素敵な現代アートだと思いました。これならきっとモネも喜ぶと思います。
近くでみると刺繍が複雑でよく分からない感じなのですが、遠くで見てみるとちゃんと睡蓮になっているのがすごい。。
竹村京
TAKEMURA Kei望んでいないのに起きてしまった出来事たち一それらを積極的に受け入れ、肯定するためにこそ、絹糸をもちいた何村の制作行為はおそらくなされる。彼女にとってなにかに絹糸を縫いつけることは、ときに壊れた事物の「傷口に光を与え」る行為であり、またときに二度と同じものとしてはとり戻せない過去の記憶を繊細に翻訳し直す営みにほかならない。不意に欠損したものは、そのありのままの状態を肯定されながらに別の輝きをまといはじめる。傷をなきものとするのではなく、むしろそれ自体を尊重しつつ、可逆的にほどくことのできる絹糸の色光とともに、事物を未来へと残すための保存の方法がそこにはある。2000年に開始された行村の「修復された..」シリーズは、そのような方法の所産だ。それが今回、破損状態のまま保存処置を施された国立西洋美術館の所蔵作品、クロード・モネの<睡蓮、柳の反映>と行村との出会いによって、あらたな展開を遂げた。
キャプションより
上はキャプションの文言なのですがコンセプトも理にかなっていていいですよね。よく考えられている。。
メモを使った来場者参加型インスタレーション
現代アートによくみられるのがこういった来場者参加型の作品。
この作品は「あなたを支配するものや人について言いたいこと、伝えたいこと、怒りなどを自由に言葉や絵でかいてください」というもの。ご覧の通り壁一面にメモが貼ってあり、こういった気持ちのネガティブな部分が可視化されるとなんだかとても恐ろしいものが出来上がっているなと、見ていてとても不安な気持ちになりました。中には「会社の上司」と書いてあって、うん。。納得。。
常設展示の作品の豊富さは日本一
忘れてはならないのが常設展。国立西洋美術館に来たら必ず常設展も足を運んでください。
常設展の作品の豊富さは国内トップクラス。オーギュスト・ロダンの《考える人》をはじめ、クロード・モネの《睡蓮》やピカソなどなど美術をあまり詳しくない人でも知っている作品が数多くあるのも魅了の一つ。宗教画をはじめとした絵画や彫刻まで幅広い西洋美術の歴史を作品を通して感じることができます。
ゴヤの銅版画展示
なんとなんと小企画展は、ゴヤの銅版画作品を絶賛展示中ということでこれは、行かなければということでこちらも鑑賞してきました。
題材が戦争中の作品だったので内容的には暗めの、時折悲しくなるような描写のものが多かったのですが、作品がどれも凄すぎる。。
この作品はエングレービングという技法が使われていて、ビュランという木版画でいう細い三角刀みたいなので彫るのですが、またこの道具が使いづらいのなんの。
この道具を使いこなせるようになるまでには、かなりの練習がいるとても玄人向けの道具です。なので私も含めほとんどの人がこのビュランを使えないからニードルで彫っています。
この線の細さがニードルでは出せないビュランならではの表現になっています。素晴らしいですね。。
銅版画をやっている人は、とても勉強になると思うのでオススメです!
ここでしか買えない限定グッズも購入
こちらはル・コルビュジエのスケッチが描かれたマグカップ。家にル・コルビュジエのものがあるだけで、なんだかすごい考え深いです。しかもスケッチの線もオシャレで可愛い。こちら色は白と黒の二色展開でどっちもオシャレなので気になる方はチェックしてみてくださいね。
こちらはロダンの「考える人」
これ実は、ただの置き物ではないんです。
何かというと、、、
まさかのボトルストッパーなんです!あまりの可愛さに一目惚れして即購入してしまいました。しかも色味もブラックのブロンズに近い色味なのでワインと馴染んでピッタリです。これはお客さんが来た時にしれっとテーブルに置いておいて「何これ!」って言わせたい。。考えた人最高。
ミュージアムショップはチケットなしでも入れますので近くにお越しの際は中を覗いてみるだけでも楽しいと思います。またネットでも購入できるので気になる方は下からどうぞ。
まとめ
今回は国立西洋美術館について紹介しました。
国立西洋美術館での現代アートが異色のコラボという感じでとても新鮮で面白かったです。現代アートは作品の解釈の仕方が難しいものも多く、よく分からないと思われるジャンル第一位ですが、その分からなさが面白いと私は思っていて自分なりに「こうなのかな」「こんなふうに見えるなと」様々な見方ができるのが最大の魅力です。なので初めての方も気張らずに気楽に鑑賞して、よく分からなかったらそれはそれでいいと思います。分かる分からないよりも面白い部分や魅力的な部分を探してみるとより楽しめると思います。
常設展も本当に名画、名作揃いなので美術館鑑賞ビギナーの方に強くオススメしたい美術館です。
所在地・連絡先・ウェブサイト
国立西洋美術館
住所 〒110-0007 東京都台東区上野公園7−7
開館時間 | 9:30〜17:30 金曜・土曜日 9:30〜20:00(最終入館 30分前) |
休館日 | 月曜日、年末年始(ただし祝日の場合は開館) |
料金 | 常設展 一般 500円 / 企画展 2000円 |