濃淡を薄くできる唯一の道具 バニッシャーとスクレーパーを使ってみよう!

今回は銅版画では欠かすことの出来ないバニッシャーとスクレーパーという道具を紹介します。
私はあまりこちらの道具は使わないので久しぶりで上手く使えるか不安です。。

目次

バニッシャーとスクレーパーとは

こちらに並んでいるのはバニッシャーとスクレーパーです。先が尖っているのがスクレーパーで少しカーブしているのがバニッシャーです。

一体どうやって使うのか。

実はこちらの道具は彫り過ぎてしまった時に使います。デッサンでいうところの、ニードルが鉛筆だとするとこちらのバニッシャーとスクレーパーは消しゴムではなくガーゼぐらいの役割をしてくれるものです。(完全に取り除けるというよりは薄くなる感じです)

銅版画は後戻りが出来ない



銅版画の特徴でもあり、慣れるまでは難点とも言える後に戻ることができないアートであること。
過去の記事でも少し触れたのですが、銅版画は加筆などの追加修正はできるものの「やっぱり、さっきの方が良かったから戻ってやり直したいな」といった後戻りが出来ません。なので加筆前のものが良ければステートという形で途中段階のものを何枚か刷っておいて手元に残します。

その後「よしやるぞ!」と後戻りできない覚悟で加筆をしていく必要があります。ちなみに私の場合は八割型上手くいくだろうと思った時や、今の作風が壊れてもいいから試してみたいなという時でない限りは基本加筆はしません。このように銅版画は足し算は出来るのですが引き算がとても苦手なアートなのです。

銅版画制作の考え方

イメージトレーニングを行う

引き算が出来ないということは、制作時にある程度慎重になる必要があります。これは私の場合ですが銅版画で作品を構築していく際に、実際に彫る前よりも先に「この技法でいいかな」「こっちは腐食時間この位かな」と何回も頭の中でイメージトレーニングをして頭の中で作品を完成させます。その後、実際に彫ったり腐食したりしてイメージトレーニング通りにいくのかを照らし合わせていきます。

この話だけだと、一見とてもシビアな銅版画ですが実はこの加筆した箇所を引き算できるのが今回紹介するバニッシャーとスクレーパーです。
引き算できるにはできるのですが、先述した通り完全に取り除くことは難しいので基本的にはこの道具は濃淡の微調整ができるぐらいの認識で使うようにしましょう。

早速、修正したい箇所があったので今回はスクレーパーを使ってみることに。

スクレーパーを使って削っていく

刷ってみると思っていた以上に三本線が強く出てしまった(左側の縦三本線)こちらの作品。
スクレーパーを使って削りとることに。

こちらが作品の版です。このドライポイントの部分を削っていきます。(光で当たって反射している部分です。)



スクレーパーを使い、このザラザラがツルツルになるかならないかのところまで削っていきます。

スクレーパー バニッシャーの特徴

ドライポイントで彫った先程のギザギザの「まくれ」の部分をスクレーパーで削ることでインクが引っかかる部分をなくしていきます。

バニッシャーで潰しながら磨く

そして、さらに追加でもっと白くしたければ油などを少し垂らしバニッシャーで擦りながらザラザラの部分を完全に潰します。

削れた部分はインクがつかない

このザラザラがなくなるとうことはインクがひっかかる部分がなくなるので白くなります。
以前にも紹介したメゾチントという技法は主にこの方法で作品を作っていきます。

ちなみに、ドライポイントは「直接技法」といい腐食液で腐食をせずにそのままニードルやルーレットで銅板の表面に傷をつけて描画していく技法です。そのため腐食した時に比べ、彫りが浅いのでスクレーパーで簡単にザラザラの「まくれ」の部分を削りとることができます。

反対に腐食して彫った「間接技法」の場合だと「直接技法」とは少し異なり見た目よりもかなり深く彫られています。そのため今回の方法だとうまく取り除くのは難しく限界がありますのでこれに関しては、なるべくバニッシャーなどの道具には頼らずに、イメージトレーニングと何回も回数を重ねて一発で表現出来るようにしていきます。



そして、こちらがバニッシャーで削ったものになります。だいぶツルツルになりましたのでひとまず擦ってみて様子を見てみます。
これは期待できそう。。

こちらが修正前後を比較したものです。左が修正後です。
少し見にくいのですが、三本線がほとんどなくなっているがわかりますかね?






近くで見ると、まだ少し残っていますが全体的に薄くなっています。
これでまた加筆、少し取り除くの工程を繰り返して自分のイメージしている作品像に近づけていきます。

まとめ



今回はバニッシャーとスクレーパーという道具を紹介しました。
私が使い慣れていないせいもあり、どのくらい削ったらどのくらい白くなるのかといった調節が上手く出来るようになるまで何回も試してみる必要があるなと思いました。

ただこちらの道具は使い方はとてもシンプルで、気になる箇所をこする感じで削りとるだけなので、使いこなせるようになると「ここの部分、少し薄くしたいな。」というちょっとした微調整の際に大活躍しますので是非マスターしてみてくださいね!

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