今日はアクアチントで作品を作っていくよ。
何それ?
アクアチントはどんな技法?
この前、紹介したスピットバイトという技法に似ていて、松脂を撒いて腐食させる技法なんだよ。ただ、スピットバイトと違うところは、全体を腐食液に漬けるから腐食しない部分をグランドで覆う必要があるんだよ。
うん・・・??
とりあえず、作り方を見ていくよ!
銅版を金属磨きで磨く
銅版を金属磨きで丁寧に磨きます。
用意するもの
・銅版
・金属磨き
・ウェス
なんで磨くの?
銅版を手で触ったりすると表面に薄い油膜が張っているから松脂を撒いて腐食する時に綺麗に仕上がらないんだよ。この工程はどの技法を使う時にもやっておくといいよ。
磨くとこのように表面が綺麗になりました。
ピカピカだね!
腐食しない部分をグランドで覆う
本日はこちらの作品を作っていきます。この絵の余白の部分をグランドで塗り潰していきます。
用意するもの
・液体グランド
・リグロイン
・銅版
・刷毛
・グランドを入れるお皿
グランドの防食についてはこの記事を見てね。
このように白色にしたい外側だけをグランドで覆います。
あー、そっか!腐食しない部分だけグランドで覆うから白くなるんだ!
裏から熱してグランドを乾かします。
松脂(まつやに)を銅版に散布する
グランドが乾いたら全体に松脂を撒いていきます。
松脂についての詳しい説明や工程はこの記事を見てね。
熱して松脂を固着させる
均一に松脂を散布できたら裏からアルコールランプなどで熱して松脂を少し溶かし、銅版に固着させます。
熱すると、少し透明になります。
熱しすぎると、粒子の隙間がなくなり腐食されないので松脂の色が少し飴色に変わってきたなと思うぐらいが完成の合図です。
比較してみると松脂の色の違いが分かりやすいね。
腐食液に浸けて腐食する
スピットバイトの時は腐食液で部分的に描画をしたのですが今回は腐食する部分が多いのと、面で均一に色をつけたいので、腐食をしない少ない部分をグランドで覆い、腐食液に漬け込みます。今回は少し薄めの黒にしたいので1分30秒程、漬けて色の濃さを確認します。
腐食液に漬ければ漬ける程、色は濃くなるんだよ。だから今回みたいに少し薄い黒にしたいときには短い時間腐食液に漬けて、足りなかったらちょっとずつ漬ける時間を足していくと失敗しにくいよ。
そっか!後戻りできないからちょっとずつ調整していくんだね。でも、どのくらいの時間漬けたらこのぐらいの色の濃さになるって分かるの?
腐食する時間と色の濃さ
何回もやってみて覚えるしかないんだけど、実はこういった色の濃さがひと目で分かる比較表を作っておくと便利だよ!
こちらの表は30秒から始まり1分、2分、3分、と1分ごとに刻まれ、後半は10分、20分、30分と10分ごとに腐食時間が増えています。それに伴い黒色の濃度が濃くなっているのが分かります。
この表は版画教室の先生が作ってくれたんだって、親切だね!
松脂の粒子の粗さや、温度の変化で腐食の色の濃さは常に変化するから一例として参考にしてみてね。
アルコールで洗う
腐食した銅版を水で洗い、アルコールで松脂を落としてきます。
松脂はガソリンでは落とせないからアルコールを使うよ。
インクを詰めて刷る
こちらがインクを詰めたものです。このようにグランドでしっかりと周りを防食したので、グランドで覆われていない部分が腐食されインクが付きました。これでいよいよ刷っていきます。
刷り方についての詳しい説明はこの記事を見てね。
面で綺麗な濃淡が!
刷ってみるとこのように綺麗に黒色が出ました。松脂の粒子が荒い部分は防食されていて少しまだらになっていてとても面白い表情が出たかなと思います。
先程の早見表と見比べると実際は1分30秒つけたのですがこちらの表だと2分の色味に近いのでほぼほぼ近い色味で仕上げることが出来ました。
まとめ
今回はアクアチントを使い面で濃淡をつけました。スピットバイトは部分的に濃淡の調整ができますが今回のように面全体に均一に濃淡をつけたい場合にはアクアチントを使ってみてください。もちろん、アクアチントと、スピットバイトの融合技でも面白いと思います。
色々な技法を合わせるのも銅版画の醍醐味だから試行錯誤してみてね!
僕も融合技使ってみよっと!
次回はドライポイントで仕上げていきます!